整形外科領域において、腫瘍はマイナーですが重要な分野です。特に悪性腫瘍は患者数が少なく、基幹病院以外ではめったに遭遇することはありません。しかし見逃すと重大な結果をまねいてしまうため、常に頭の片隅においておく必要があります。
一般の整形外科医師は、系統的に骨・軟部腫瘍を学ぶことは少ないと思います。したがって、平易でかつ分かりやすく記載された辞書的な書籍が有用です。”骨・軟部腫瘍および骨系統・代謝性疾患”は、そんな一般整形外科医師のニーズにぴったりの書籍です。
概論が最初の30ページ程度なので、これはあらかじめ通読するとよいでしょう。各論は原発性骨腫瘍、腫瘍類似疾患、転移性骨腫瘍、軟部腫瘍、骨系統疾患、代謝性骨疾患の6章に分かれています。各章とも疾患ごとに、豊富な写真でわかりやすく解説されています。
全体的にガイドラインに準拠してわかりやすくコンパクトにまとまった良書といえます。注意点は、特に軟部腫瘍において良性・悪性を同じセクションで記載されていることです。良性・悪性軟部腫瘍を分けた書籍に慣れた方は少し戸惑うかもしれません。